打って、守って、恋して。
キャッチボールで愛を語ろう


北海道の秋は短い。
世間的にはまだ秋でも、こちらからすればもう冬はすでに来ていて。ひゅるりと身体を肌寒い風が吹き抜けていくたびに身震いした。

二年ほど前に買ったベージュのダウンにマフラーを巻いて、ショートパンツに厚手のタイツ、足元はローヒールのショートブーツを履いている。
手には手袋……ではなく、人生で初めてつけた、野球のグローブ。


年齢様々の子どもたちが楽しそうに駆け回ったり、ボール遊びをしている芝生の上で、大の大人が二人でグローブのつけ方をあれこれ試行錯誤していた。

「えっ?あ、そうか…グローブって利き手と逆につけるんだよね」

「そう、だから左手につけて。ここに指を通して……あ、違うよ。ここだって」

「待って、指がつりそう」

「なんで!?」

グローブに差し込んでいた左手を抜いて、右手でがしがしさする。中指がツーンとつりそうになっていて、生きた心地がしなかった。
同じように暖かそうなダウンを着た旭くんが、自分のグローブは脇に挟んで私のためになんとかグローブをつけさせようと苦労している。

小学生くらいの男の子たちが少し離れたところで、まさにキャッチボールをしているのが見えた。使っているボールはゴムボールのようだが。

「手袋をはく感覚でつけて。……なんでそんなに力を入れるの?」

「だって手袋じゃないよ、これ!重い!」

「グローブだから当たり前だよ」

想像していたよりも野球のグローブは重かった。
それでもこのグローブはまだかなり軽い方だと聞いて驚いたけれど。

なんとか時間はかかったもののようやくグローブを左手にしっかりとつけた私は、ちょっと得意げに握ったり開いたりを繰り返した。
こうかな?と彼に見せると、満足そうにうなずいていた。

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