すごい偏見だが、今のところ容姿は完璧なので指摘するところが性格しかない。私はふんっと鼻息荒くスーツの入った紙袋を掲げた。
「返しますから。ちゃんと、スーツ代」
「けっこうですよ。それよりも仕事で返してください」
「それとこれとは別で、ちゃんと返します」
 私が間髪入れずに言い返すと、少しの間があって『……可愛げのない、小さなお嬢さん』と異国の言葉が聞こえてきた。フランス語だ。しかも、小さな幼児に対するものだ。カチンときて私は目を剥いた。
『可愛げなくて申し訳ございません。あと、もうお嬢ちゃんという年頃ではありません!』
 今ちょうど習っているフランス語で応酬してやると、今度は向こうが目を丸くした。フランス語まで理解しているとは思っていなかったようだ。事実、習いたてで簡単な会話しかできないけれど。イケメンが豆鉄砲を食らった顔を見れて少し気分がすっきりする。
 さっさと秘書からコンシェルジュに戻ってやる。
 そう気持ちを乗せて、カツカツと荒々しくアスファルトを踏み鳴らして歩いた。