私を推薦した副総支配人の顔もある。昔から、期待は裏切れない性格だった。
だから、四苦八苦しながらも秘書業務をこなす。ほぼ毎日、涼しい顔で激務をこなす総支配人を横目で見つつ。秘書の机も総支配人室なのだ。
綺麗な顔を毎日間近で眺められていいなと女性社員から言われたけれど、見目がいい分可愛げのない性格がより際立って小憎たらしくなってくることのほうが多い。
「はぁ、早く戻りたい」
「お疲れ」
 私の前に座って食堂のお茶を飲む太一が気づかわしげな視線を寄越してくる。
「でも、仕事はできるんだろ?」
「うん、ロボットみたい。隙がないしミスもないの」
 容姿ともども仕事も完璧だった。一度も総支配人の不備で周囲から問い合わせがあったことはない。むしろ、周囲の上げてくる事案のミスを彼が見つけて、書類なりが突き返されることはあった。あの「ちんたらしてたらリストラするぞ、コラ」発言でピリつく社員。その間に立たされる私。中間管理職は神経をすり減らす。
「一体いつコンシェルジュに戻れるのかな」
「でもさ、総支配人に認められるなんてすごいじゃん」
「そうかな」
「そうそう、俺は同期が出世頭になって嬉しいけど。これで俺のクビが飛びそうな時は美希がダメだって進言してくれよ」
「バカ、私にそんな力あるわけないでしょ」
 完璧他人事のようにケラケラ笑う太一に私は唇を尖らせた。まぁ事実他人事なのだけれど、もう少し同情してくれてもいい気がする。私からの恨めしい視線も気にせず、太一は皿に残った唐揚げを一口で頬張った。