帝都プリンスホテルは明治から続いている老舗だ。その歴史から『由緒ある、日本を代表する高級ホテル』というのが、うちのホテルの代名詞だった。
 それが最近は都内に外資のホテルも多く建ち、格安ビジネスホテルも勢いを増してきた。昔ほど高級志向ではなくなり、利便性と価格が重視されている。
 帝都プリンスホテルがとった打開策として、東京の他に大阪にも十年前にホテルを建てた。その他にも地域の廃業する温泉旅館を買い取ったりと模索を重ねた結果、逆に経営難に陥ることになった。親族経営で、先代から継いだ息子の四代目の改革案が全て裏目に出た。倒産するというところまで来たが、ある会社が救いの手を差し伸べた。
「アメリカのホテルグループが、うちを買い取るなんて」
 世界中に高級ホテルを運営しているエターナル社が買収に名乗りを上げた。かろうじて帝都プリンスの名前は残るものの、経営陣は総入れ替えだ。ほぼ別のものとして生まれ変わると思って、間違いない。
「新しい支配人、外人かな」
「さぁ」
 太一は落ち着きなく、かつ丼をぼそぼそと食べている。
 昼休み、ホテル内の社員食堂で私たちは向かい合わせで遅めの昼食をとっていた。私はオムライスを一口含むと味わうようによく咀嚼する。社員食堂ながらも、ホテルということもあり美味だ。普通の定食屋よりもずば抜けていて、安く食べられるのだからありがたい。
 太一はそんな私を思いっきり呆れ顔で眺める。