「なんで肉まんなんですか?」
 その人は、不可解かつ奇妙だと言わんばかりに眉間に皺を寄せて、目の前の白い肉まんを凝視した。私は向かいの椅子に腰かけて、紙に包まれた肉まんを手に首を傾げる。
「え?あ、コンビニに行ったら、無性に食べたくなってしまって。もう肉まんが恋しくなる季節なんですねぇ」
「だからって私の分まで買ってこなくてもいいでしょう」
「えー、コンビニのですけど、意外とおいしいんですよ?」
「そういう意味ではないんですが」
 私の返答に隠す気もなく盛大にため息を吐く。だけど、しっかり両手で肉まんを持つと、二つに割って片方を口に運んだ。肉まんが嫌いなわけではないらしい。もぐもぐと咀嚼していく姿に私も嬉しくなって、自分の分の肉まんに齧り付いた。
「意外と紅茶とも合いますね」
「ええ」
 白と黒の色違いのマグカップに淹れた紅茶はダージリンだ。あっさりと飲みやすい風味と肉まんが意外と合って、二人で頷き合う。
 私たちの休憩タイムのお茶会も二週間ほどになる。時間帯はバラバラだ。三時のおやつではないけれど、昼食後少ししてからする時もあれば、会議やら外回りやらの用件が入れば、終業時間間際になることもある。基本的に私が用意したら、それに総支配人が付き合うという形。タイミングとしては、彼の手が空きそうな頃合いを見計らってはいる。
 最初は紅茶だけだったのだけど、二日経ってお茶請けくらいほしいなとコンビニでクッキーを買ってきた。それを小皿に乗せて出すと、意外にも残さず食べたから次はチョコレート、そして次の日はバターサンドというふうにお菓子も用意するようになった。
本当なら、スーツ代に少しでも見合うように百貨店などで売っている高級菓子を用意するのだけど、それをするとこの目敏い上司は「お菓子は結構です」と言いそうだから、手軽な価格帯のコンビニスイーツに限定している。それもあくまで『私が食べたくて余っちゃったので』という体裁の元にだ。いろいろと面倒くさいけど、こうして自分の用意したものを食べてくれるのは嬉しい。
 例えるなら懐かない猫がようやく近くまで来てくれたような、小さな感動すらある。ただ、そんなことを言った日には、自分を猫扱いした私と当分口を効いてくれなさそうだけど。