「私が死んだら、あの家はあんたの母親にくれてやりなさい」
 祖母が亡くなる数日前、見舞いにきた私に祖母はいきなりそう切り出した。
「どうせ、売ってしまうだろうけど、私たち夫婦の思い出は私たちで終わりにしていいからね。美希ちゃんは自由に、どこへでも行けるんだから」
 病床の祖母は朗らかな笑顔とともに私の頬を撫でた。皺で血管が浮いた細い手。枯れ木のような指はとてもあたたかくて、涙が出そうになった。
「自由に、自分のしたいように生きなさい。そうしていたら、いつか隣にあなたのこと愛してくれる人が現れるから大丈夫」