鳴らない僕のスマートフォン
ならない携帯を手に画面を見続けた
もやが消えない
胃が収縮して吐き気がする
8を指す短針が震えて動かない
同じような人が幾度と無く前を通る
コートのポケットに入れた手が赤く染まった
陽気に笑うスーツの男が羨ましい
隣で電話をした男が右手の階段に駆けていく
短針が9を指す
僕のスマートフォンは鳴らなかった
耳の中に板を仕込んだ感覚が生まれて
アルコールの匂いが通る人々からする
床のタイルを見つめた
灰色の板に黒い線
きれいに見えるこんな床が僕の涙を誘った
眼下のタイルを蜃気楼が包む
僕の丹田が凍えた
駅前の改札で頬を赤く染めた彼女の笑顔は
知らない男に向いていた
耳に奥歯の軋んだ音が響いた
冷たい足が動いて彼女が遠くなっていく
頭の上で電車の案内が鳴って
そのまま下へ背中を這いまわる
迎えに来るべきではなかった
温もりは偽造のようで肌に馴染まない
隣で携帯の画面を見つめる彼女
幾千の唾を巻く僕の口
それでも。
彼女は画面を見つめ続けた
もやは消えない
頭の血管が収縮する
僕の眉間にシワが寄った
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