翌日、私は誠と昼前までベッドで過ごし、大通りのレストランでゆっくりとlunchをして、マンションに帰ったのは、北国の冬の、早い日暮れが始まった時間だった。

 札幌駅からそのまま入れるような構造になっているこのマンションは、一年だけの任期でこの地に赴任する、雪国に慣れない私たち夫婦のために、夫の会社が用意してくれたものだ。
赴任した去年の四月は、まだこの地は雪に閉ざされていて、会社の配慮に感謝した。東京の自宅よりも豪華なこのマンションでの一年に心弾ませた春だった。それが今、私はこのマンションに帰りたくはない、あの時から、私にとってこのマンションは、汚れた、居たたまれない場所になっている。

 ドアを開けた私の前に、夫が、達人(たつひと)が立っていた。私はその顔を真っ直ぐに見る。
「やっぱり泊まったんだね。」
「ええ、そう言ったでしょ、彼と泊まるって。貴方も泊まったんでしょ。」
「いや、僕はあの後すぐに帰ったよ。」
「あら珍しい、なんで、愛する由美子と泊まってくればよかったのに。愛する由美子にお誕生日を祝ってもらうんじゃなかったの?」
「そんな言い方するなよ、彼女とはそんなんじゃないって言ったじゃないか。」