敏腕室長の恋愛遍歴~私と結婚しませんか~
3章 曖昧フィアンセ

週明け。
秘書室に配属されてからいろんな失敗をして怒られるたび落ち込んで、会社にいくのが嫌だなあ、なんて思ったこともあったけど。

今朝はその比じゃないほどに出勤するのが嫌でたまらなかった。

その理由は、何を考えてるかわからない室長がますますわからなくなったせいだ。

週末、何度も私の頭の中で再生された衝撃のキスシーン。
あろうことか私は、ああ、室長ってあんな風にキスするんだ、なんて思ってドキドキして。

というか思い出すのそこなの?って自分でも呆れてるけど。
自分の上司が人前であんなコトしちゃうような奴だったことに幻滅できたらいいのに全然出来ない。
これって絶対イケメンマジックなんだと思う。

そう、顔面偏差値高い人は何をしても絵になるし許される世の中なんだよ、きっと。


「……おはようございます」

「おはよう。七海ちゃん朝からご機嫌ななめね。何かあったの?」


オフィスに着くと、先に来ていたのは阿川さんで、普段はもう少し明るい声で挨拶をしているはずの私を心配する言葉をかけてくれる。


「いえ、月曜だからテンションが上がらないだけです。すみません」

「ふふ、ならよかった。私も月曜は憂鬱だわ」


微笑む阿川さんとの会話をしつつ、私の注目は今日、室長は直行なのかどうなのかに向けられていた。
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