俺がきみの一番になる。

ドキドキするのは、きっと気のせい


「へえ、それでそれで?」

キラキラと輝く結愛ちゃんの瞳。長い髪をかき上げる結愛ちゃんは、最高に女の子らしくて見惚れてしまう。

「それで、仲直りしたっていう話だよ。べつに、それからはなにもないからね」

これまでにあった本田君とのことを初めて結愛ちゃんに話した。

気づけばもう夏休みに入って、すでに一週間が経過している。毎日ゴロゴロしているだけの日々は、退屈だけれど心地いい。

「だって、告白されたんでしょ? そこまで想ってもらえて、愛されてるね、亜子ちゃん」

「そ、そんなことないよっ! 結愛ちゃんったら!」

口ではそう否定するものの、顔は真っ赤になっている。

唯一の友達の結愛ちゃんとカラオケ店にきていた。フリータイムで歌い尽くしたあとは、お互いの近況を語る時間だ。結愛ちゃんとは学校がちがうから、積もる話がいっぱいある。

「亜子ちゃんってば、赤くなっちゃってー! かわいいんだから」

「そ、そんなことないもんっ」

ムキになればなるほど逆効果。結愛ちゃんはニンマリ笑っている。背中まで伸びたストレートの髪と、スラリとした手足。全体的に華奢で、背が高くて、目鼻立ちがしっかりとした美人さん。

「でも、よかったよ。その沢井さんって人が、それからなにもしてこなくて。それにしても、すごい自分勝手だよね! 話聞いててイライラしちゃった。なにより、あたしの大事な亜子ちゃんになにしてんのって感じ!」

プンプンと頬を膨らませて私のために怒ってくれる結愛ちゃん。怒っているのにかわいくて、なんだか和む。

「あは、ありがとう。でももう大丈夫だよ」

あれ以来、沢井さんは宣言通りなにもしてこなくなった。廊下ですれちがっても、目も合わないし、ヒソヒソ言われることもなくなった。

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