俺がきみの一番になる。
第一章
かわいいと思ってる
カキーンと金属になにかが当たる音が、どこかから聞こえた気がした。でも、どこからだろう。
目の前が真っ暗で意識もフワフワしているから、よくわからない。
なんだか夢心地で、もしかすると夢の中の出来事なのかな。
「……いっ! おいっ!」
「ん……」
どれくらい経ってからだろう、誰かの声が耳元で聞こえた。意識が戻ってくる感覚がなんとなくわかって、だんだんと現実味を帯びてくる。
「おーい、聞こえてるかー?」
「う、ん……」
「聞こえてたら、目ぇ開けて。つーか、お願いだから目ぇ開けて」
肩を揺さぶられて、次第に意識がはっきりし始める。
「うーん……」
額や全身にじっとりと汗をかいているのがわかった。
ぼんやりとした意識の中で、ここはどこだろうという疑問が浮かんでくる。
そういえば、私……。
ハッとして、目を開けると同時にガバッと起き上がった。真っ先に目に飛び込んできたのは、心配そうに眉を下げて私を見つめる男の子。
野球部のユニフォームを着ているということは、部活中なのかな。
太陽の光がサンサンと降り注ぐアスファルト。
そしてその先には、汚れきった水が足首くらいまで溜まっている大きなプールがある。
どうやら私は、プールサイドのベンチの上で寝てしまっていたようだ。こんなかんかん照りの晴れの日に屋外で寝るなんて、ありえないよ。
それにしても、暑い……。
汗がたらりと背中を伝った。まだ五月下旬だというのに、真夏並の暑さだ。ベンチのところはちょうど影になっていて、暑さはいくらかマシだけれど。
「大丈夫か?」
「え、あ」