星空電車、恋電車
いたたまれず腰を浮かせかけた時、
「じゃあ俺と付き合うってことでいいよね」
と隣に座る樹先輩の嬉しそうな声がした。

いいも悪いもありません。もちろんいいに決まってます。地面に座り直して必死にこくこくと頷く。

「千夏は今日から俺の彼女だから」

優し気に目を細めた樹先輩にニコリとされて思わず
「はいっ」っと大きな声で返事をしてしまうあたりはなにぶん恋愛経験に乏しい身なのでご容赦いただきたい。

「ヨロシク、彼女さん」
樹先輩の大きな手が私の頭をクシュっとして離れていく。
えへへっと自分でも顔が溶けそうになるほど緩んでいくのがわかった。

やった。
私、樹先輩の彼女だ。
あの憧れの樹先輩の彼女になったんだ。

嬉しさと恥ずかしさでバタバタしそう。

ーーー浮かれまくってだらしない顔になった私と笑顔の樹先輩。そんな私たちの姿は樹レーダー搭載の京平先輩にすぐに気が付かれてしまい、思い切り冷やかされたのは言うまでもない。

付き合いたてほやほやの私たちの関係は京平先輩のせいで部員全員の知るところとなってしまった。
みんなに騒がれ突きまわされて私は死ぬほど恥ずかしかったのに樹先輩はずっと穏やかな笑顔を浮かべていて。私とは格の違いなのか次元の違いなのか・・・。


結局、大騒ぎする京平先輩のせいでほとんど夜空は見られなかった。

ま、流星群はまた見るチャンスもあるだろうから別に気にしない。今度は樹先輩と二人きりで流れ星が見られるといいなあ。

そんな記念すべき夜だった。

< 13 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop