星空電車、恋電車
私の方は動揺しまくりでうまく表情を作ることができない。

彼女は彼の隣に私がいることがわかっても彼の腕を離そうとしなかった。
後で連絡するって何を話すの?
幼なじみって要は他人でしょ?
彼女の前で後で連絡し合う話をするなんて先輩も桜花さんもちょっと無神経なんじゃないかなーーーと思うのだけど。

おまけに、来年彼女が合格したら私と同じ学校に通うとか。
何ともいえない憂鬱な気持ちになる。

初めてのデートの締めくくりは何ともやるせない思いが心にのしかかってくるという重たいものになってしまった。

「そういえば、去年俺が使ってた参考書欲しい?よかったらあげるよ。解説分かりやすいし例題の出し方もうまくて模試対策になるしーーー」

私の気持ちに気が付かないらしい樹先輩が違う話を始めた。
いきなり現れた可愛らしい女の子のことで不安がいっぱいの私の脳には樹先輩の言葉が入ってこない。

彼女は樹先輩にとってどんなひと?
私の前でも自然に触れあって、連絡の約束をして。

別れ際になっても私は樹先輩と桜花さんの関係を詳しく聞くこともできず、結局作り笑顔を浮かべて「また明日」と手を振った。

樹先輩は私を家まで送ると「練習の後、引っ張りまわして疲れさせてごめん。今夜はゆっくり休めよ」と見当外れの声をかけて帰って行った。

そうじゃない、私の様子がおかしくなったのは疲れたからじゃないのに・・・。
付き合いの浅い私には桜花さんのせいだと樹先輩に言うことはできなかった。こんなことを言って嫌われたら怖い。ただそれだけ。

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