星空電車、恋電車
翌日、学校から帰ると母が私の顔色を窺うようにしながら話しかけてきた。

「千夏、叔父さんが千夏が下宿するなら部屋を貸してくれるって言ってたわ。このまま今の高校に通いたいのならおいでって。どうする?」

「叔父さん、いいって?叔母さんも?」

「うん、気持ちよくオッケーしてくれたわ。二人とも千夏となら楽しくやっていけるんじゃないかって言ってた」

正直なところ、かなりホッとした。

母の弟夫婦は結婚してまだ5年。叔父は41才、奥さんは29才で年の差夫婦。
叔母は義姉の母よりも私の方が年齢が近く子供はおらず夫婦だけで暮らしてた。

そこにお邪魔虫のような女子高生が割り込んでいいのだろうかとチラッと思うのだけれど、ここはわがままだけど両親と叔父夫婦に無理を言っても卒業までお世話になりたいと思うわけだ。

「この家はすぐに売れちゃう?」

「どうかしら。駅から近いけど、築10年以上だし。お母さんはあまり値引きしたくないのよね。お父さんには悪いけど、少し様子を見るつもりでいるわよ」

母は好条件の買い手がつくまで様子を見るつもりらしい。
とはいえ、私は不動産売買の事情はこれっぽっちも知らない女子高生だから何がどうなってるのかよくわからない。

「千夏のインターハイの前に売りに出すこともお母さんがいなくなることもないから。それは大丈夫よ。こんな大事な時期に不安にさせてごめんね。全力でインターハイ頑張って」

母の言葉にまたホッとした。

とりあえず、あと1ヵ月は大丈夫ということ。

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