星空電車、恋電車
樹先輩は一体どういうつもりなんだろう。

彼女に心を奪われているのなら、早く私と別れるべきだ。
別れを切り出したくても今は故障した私のことを放り出せないだけなんだろうと思う。
でもそんなのただの偽善者。

私はそれから返信をしなかった。

その後、樹先輩が私のことを心配するメッセージを送ってきたけれど、もちろん未読のままスルーした。

心配する言葉が嘘だと思っているわけじゃないけれど、二股しながら優しい言葉をかけられても嬉しくもないしバカにしてんのかって思う。

翌日、転校のことで昼休みに職員室に呼ばれ先生と事務の女性と話をして昼休みが終わるギリギリの時間になって教室に戻ると、同じクラスの蘭から私のいない間に樹先輩が私を探しにクラスに来たと知らされた。

私のことを心配して様子を聞いていたって言うけど、今さら心配などしてもらっても嬉しくはないし、顔を会わせたくもない。

何の話をすればいいのか、どんな顔をしたらいいのかもわからない。
別れ話なら尚更聞きたくはない。


県下でも有名なマンモス高であるうちの高校は学年が違うと校舎も違うし、三年生は受験に備えて毎日補習や特別講義があって1,2年生とは下校時間も違う。
翌日から朝はギリギリで登校し昼休みは他のクラスにいる友達の所で過ごしたり自習室や図書室、保健室などと毎日居場所を変えて顔を合わせないようにした。

そうして、電車通学からバス通学に変えて帰り道も変えた。

そうして過ごした9日間。
引越し前日も普通に登校した。
そして夕方のホームルームで転校することをクラスで公表すると同級生は絶句していた。
突然のカミングアウトだったから、中には夜逃げだと思った同級生がいたかもしれない。
不名誉な噂になったらごめんね、お父さん、と心の中で謝罪し苦笑した。
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