星空電車、恋電車

観測会

**


『星空観測会』の夜は程よく風があって雲が流れる絶好の観測日和に恵まれた。

観測場所の公園は駅から徒歩5分、住宅地の中にあって地域の主催で開催されているようだった。
駅から丁寧にいくつもの道案内の看板が立ち、観測時間になると公園周辺の住宅は照明を抑えて星空観測しやすいように協力するらしい。

大学生活が始まって何人かの友達もできたし、バドミントンのサークルに入って軽く運動することもしている。

あれから膝に爆弾を抱えてしまった私はもうアスリートではない。
違和感があれば休めばいい。軽く身体を動かして汗をかければいいのだ。


そんな中で今夜の『星空観測会』は友達を誘うことなく自分一人で来ることを選んでいた。誘う友達がいなかったからじゃなくて一人で参加したかったからで、何となく一人で来た方がいいように思ったから。

参加したからと言って別にあのアイドルもどきの山下さんに声をかけるつもりはない。
入るつもりのないサークルに勧誘されるのも面倒くさいし、帰宅時のボディーガードもいらないし。

これから学生時代の4年間を過ごすこの街から見える星空に興味があった。
日本国内、しかも同じ本土で星空の見え方など大きくは違わないことはわかっているけど。

会場になっている公園に着くと、このイベントの規模の大きさにちょっと驚いてしまう。

ちょっとした町内の子ども会のイベントの延長程度に考えていたのが大きな間違いだった。

新興住宅地の大きな公園はとてもきれいに整備されていて、あちこちに転倒防止のための足元を照らす照明が置かれている。
入口には救護テントがあり中に赤いEmergencyベストを着た女性の姿も見える。
その奥には警備会社のテントと大柄な警備員の姿も見え本部テントには警察官立ち寄り所の看板も立っていて安全対策はバッチリされているようだ。

本部テントの反対側には軽食スペースが広がっている。
軽食と言っても神社のお祭りの出店というものじゃなくて、都会のオフィスビル群の間に停められているようなホットドッグや洒落たデリ、カフェ、スイーツの移動販売車が並んでいた。

広場には簡易テーブルが並べられ、赤のチェックのテーブルクロスがかけられ控えめなLEDキャンドル型照明が置かれていて、カップルや家族連れでほぼ満席。
ずいぶんと賑わっている。

「すごい。本格的」
思わず、感嘆の声を漏らした。

< 41 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop