星空電車、恋電車
このイベントの企画運営をしている人たちのセンスの良さにも感心してしまう。
どこかのテーマパークやショッピングモールとはひとあじ違い、アットホームな雰囲気と華やかさを合わせた夢のような世界が広がっている。


そしてきょろきょろしながら歩いていくと、この広場の中央にひときわ大きな天体望遠鏡が置いてあり、その周りには多くの人が集まっているのが見えてきた。

よく見ると、広場のあちこちにいくつも大きな天体望遠鏡が置かれていて、身振り手振りをしながら説明する若者とそれを囲むように集まっている子どもや大人たちの輪がある。

「あと10分で仮設照明を消灯します。移動は今のうちにお願いしますー」
ハンドマイクを握った男子学生が大きく手を振りながら参加者に移動を促している。

マイクの声は「お近くの望遠鏡の周りにお集まりください」と繰り返している。

よく見ると、参加者は皆それぞれあちこちに置かれている望遠鏡が置かれた場所に向かって歩いている。
星空観測をするにはどうやら会場内にある7~8か所ほどの望遠鏡の輪の中のどこかに加わった方がいいらしい。

「どこも基本的な星の説明は同じでーす。イケメン学生が担当じゃないところの方が空いていますよー。女性の皆さーん、できれば空いているところに移動してくださいー」
と懇願するようなマイクパフォーマンスに周りから笑い声が起きた。

イケメンの学生ってあの山下さんのことかな。
あのアイドルもどきの整った顔を思い出してしまう。
確かにあの顔は若い子だけじゃなくておばさま、おばあさま達にも可愛がられそうだ。

くすっとわらいそうになった時、隣を歩いてきた4人組の女の子たちの話し声が耳に入った。

「ねえ、ねえ、今年は中央の大きな望遠鏡のとこだけじゃなくてあっちこっちにイケメンがいるんだって」
「ここのサークルって入る時、顔の審査とかもあるのかな。毎年何人もイケメン入ってきてるよね」
「ほんっと、ソレ。一通り全部のポイント見て回って好みの男の子がいるとこの輪に入ろうよ」
「あー、さんせー。早く見に行こう。毎年、コレが楽しみなんだから」

大学生らしき女子たちは星空が目的なのかイケメンが目的なのかわからないけれど、わいわいと騒ぎながら足早に去っていった。
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