星空電車、恋電車

二年振りの再会



山下さんから指示された駅前に向かう。
足は震え、手先は冷たい。心臓はバクバクして吐き気もする。
本気で逃げたくなってきた。どうしよう。
こんなこと了解するんじゃなかったと今さらながら後悔。

改札を出たところでよく知った顔を見つけた。

「逃げずに来たな。エライエライ」
いつもなら頭を撫でられそうな言い方にムッとして言い返してしまうところだけれど、今日はそのいつもの顔を見てホッとした。

「ここで待っててくれたんですか」

「そう。千夏ちゃんをたきつけた責任もあるし、気になったしね。俺も一緒に行った方がいいかい?」

それは嬉しいけど・・・それじゃダメだと思う。
「一人で行ってきますね」

「うん、よかった。行っておいで。ここで待っててあげようか?」

「過保護ですよ。大丈夫です、行ってきます。山下さんは恵美さんのところに行っててください」

私がクスリと笑うと山下さんはホッとした表情に変わった。

「わかった。でも、千夏ちゃんが呼べばいつでも迎えに来てやるから。遠慮しないで呼ぶんだぞ」
「ハイ、お兄ちゃん」

山下さんに行ってきますと小さく手を振ると彼は苦笑している。少しだけ気持ちが解れ樹先輩のいる待ち合わせの駅前広場に歩き出すことができた。
手足の震えは治まった。


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