星空電車、恋電車
心は真冬

先輩と私

それから平穏な日々が流れていった。

キャンパスでサークルメンバーといる柴田さんの姿を見かけることはあるけれど、樹先輩の姿を見ることはなかった。

山下さんの話では他の大学の教室を使うサークルの集まりには参加しているらしいから樹先輩の方がこの大学に来るのを控えてくれているのだろう。



秋が過ぎ、冬になる頃には私の生活も落ち着いた。

いづみとその彼氏は相変わらず仲が良くて冬休みにスキー旅行を計画しているのだとか。
ユキにはまだ彼ができないけれど、同じように上浦先輩も彼女を作ることができずにいるらしく、懲りもせず二人で合コンをセッティングしては出会いの場とやらを作り撃沈するということを重ねている。

「もうユキと上浦先輩ってことでいいんじゃないの?」

頻繁に連絡を取り合って合コン対策を立て肩を寄せ合いひそひそ密談をしている姿は恋人同士に見えないこともない。だからこの二人が付き合ってしまえばいいのに、と思うのはいづみだけじゃなくて私もそう。

ユキがちっ、ちっ、ちっと人差し指を横に振って私といづみに冷めた視線を向け、わかってないなと否定する。

「違う。上浦先輩は違うんだよぉ。あの人はこうハートにキュンってこないし」

「ハートにキュンね。そう言われたら・・・あの顔にキュンはないか」

いづみも何気にひどいことを言っている。

「付き合ってみたら意外と違わないかもしれないじゃん?」

「じゃあ千夏が付き合ってみる?」

え、わたし?
自分の隣に立つ上浦先輩を想像してみるが。

「・・・ん、私は・・・ごめんなさい、ちょっと無理かもデス」

ほらごらんとフンっと鼻で息を吐いてユキは腕組みをした。

「ああいう人は友達がいいのよ、恋愛感情ないから何でも言えるし、勝手なことも言い合えるんだから」

勝手なことを言い合う、ねぇ。
でも、この二人の関係はそうかもしれないなと苦笑した。
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