極上御曹司に求愛されています
第七章

その日の夜、芹花は悠生の実家に連れて来られた。
閑静な高級住宅地に建つ三階建ての屋敷には、木島グループのトップである悠生の父親、木島成市と妻の緑が住んでいる。
同じ敷地内の別宅には、悠生の兄である愼哉とその妻千春が住んでいるが、この二人も本宅で芹花と悠生を待っていた。
なぜ事務所に悠生がいたのかを聞き出す間もなく悠生に車に乗せられ連れて来られたが、立派な日本家屋を前に、芹花は息をのんだ。

「嘘でもなんでもなく、本当に御曹司だったんだ……」
 
敷地を取り囲む石塀はどこまで続いているのかわからず、それだけでも家の大きさは想像できたが、日本庭園を思わせる優美な庭の中にどっしりと構える木造家屋はかなり大きく、ここは有名旅館か何かではないかと芹花は思った。
大学を卒業するまでは、悠生もこの家で暮らしていたが、仕事を始めたと同時にひとり暮らしを始めていた。

「広いだけで維持していくのは大変だし、空調の効きはもうひとつだし。今住んでるマンションの方がよっぽど快適だぞ」
 
悠生はそう言って、ぽかんと口を開けたまま家を見上げる芹花を笑った。

「こんなに大きな家だったら、アトリエも作れそうだな……」
 
ぼんやりと呟いた芹花に、悠生は肩をすくめた。

「アトリエの一つや二つ、言えばすぐに作ってくれると思うけど、娘が欲しかった母親に気に入られて同居ってことになるかもしれないから、それはやめてくれ」

「同居、したくないの?」
「当然だろ? 家の仕事を手伝うのは仕方ないとしても、プライベートは芹花と好きにさせてほしいよ。兄貴も千春さんと二人で暮らしたいからって別宅を建てたんだ」
 
悠生は芹花の手を引き、玄関までの長いポーチを歩いて行く。
素直について歩く芹花だが、同居だとかプライベートだとか、芹花との結婚を前提にした言葉が悠生の口から飛び出し、どういうことだろうかと戸惑うが、悠生に気にする気配はない。

「芹花は気を使わずにいつものままでいいから。父さんも母さんも、仕事には厳しいけど普通のおじさんとおばさんだ。緊張することもない」
 
悠生は軽くそう言って、緊張している芹花を気づかうが、いくら気を使われても、恋人の両親に緊張なく会えるわけがない。
おまけに父親は国内有数の企業グループを率いているのだ。
あまりの緊張に、芹花はこのまま回れ右をして帰りたいくらいだ。

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