触れられないけど、いいですか?
使い慣れた筆を、半紙の上に走らせる。
こうして字を書いている時が、一番落ち着く。
「さくらー、準備出来た?」
襖を開けながら、姉が背後から声を掛けてくる。
「って! なんでこのタイミングで習字してるの⁉︎ せっかくの着物が汚れたらどうするの⁉︎」
「緊張が和らぐかなと思って」
「どこからどう見ても全然緊張してないじゃない! はいはい、筆も紙も片付けて! あー
、私の方が落ち着かないわ!」
確かに、私より姉の方が明らかに動揺している。
本来ならば、私の方がもっとそわそわするべきなのだろうけれど。