触れられないけど、いいですか?
「えっ……?」

「さくらにこれ以上、変な虫が近寄ってこないように」

「へ、変な虫って!」

どことなく穏やかではない言葉に、思わず声をあげて驚いてしまったけれど……


彼のその言葉を、少し嬉しくも感じた。


繋がれている自分の左手に、ちらりと視線を向ける。

この左手の薬指に、彼からもらった指輪を付けている自分を想像して、少し顔が赤くなるのが自分でも分かった。
でもそれを彼に気付かれるのは恥ずかしいから、見られないようにパッと前を向く。


ーー今日一日で、翔さんへの印象は大分変わった。
紳士的で王子様の様な男性だと思っていたけれど、実際はもっと感情的で、私なんかじゃ到底逆らえない圧力を感じる。


だけど、マイナスな印象に変わった訳ではなく、寧ろ……。


でも、そんな彼にまさかの告白されたことは、戸惑いを隠せない。


私と彼の関係は、これからどうなっていくのだろう。


繋がれた左手が、やけに熱い。
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