触れられないけど、いいですか?
そして、翔君が私の左手の薬指にそれをはめてくれる。

それだけでも嬉しいのに、



「これで正真正銘、さくらは俺のものだよ」



独占欲丸出しのその言葉を掛けられた瞬間、私の顔がカッと熱くなる。

その言葉は私を非常に恥ずかしくさせるけれど……嫌ではない。変
なの……以前の私だったら、男性から独占されるなんて考えただけで震えたのに。

翔君になら、ずっと独占されていたい。



「……ありがとう、翔君」



彼のことが好き……ってはっきり気が付いた。

恥ずかしくて、まだそれを彼に伝えることは出来ず、お礼を伝えることが精一杯だった。

でも、きっと彼は、私より先に私の気持ちを分かっていたんじゃないかななんて思った。だってエスパーだし。


でもいつか、そう遠くない内に、ちゃんと自分の口から〝好き〟って言いたい。



ーーこの先もずっと、翔君と幸せな日々を送れますように。


家に帰った後、左手の薬指にはめられた指輪を見つめながら何度もそう願った。
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