にじいろしぐれ

狐のあやかし

「...ゃん、うちゃん、」


私誰かに呼ばれてる?

とても落ち着いた声色...心地がいい

ゆっくりと意識が浮上してくる


「お嬢ちゃん。」


「んっ...」


目を覚ますとあたりはもうすっかり暗くなっていた

「お嬢ちゃん。」


とても透き通った綺麗な音が私の耳に届いた


「ん...?」


「どこから来たの?そんなに濡れて。」


「...?」

ふわりと暖かい風が吹き私の目の前にふっと人像が現れた

スラリと伸びた長身、顔はよく見えないがひどく整っているように感じる。

男の人...だろうか。


「お嬢ちゃん。どこから来たの?こんな曖昧なところにいちゃダメだよ。ほら、人って弱いでしょ?
すぐ壊れちゃうよ。」

...?

曖昧?

壊れる?

「ふふ、その様子じゃ何も分かってないみたいだね。



「ここはお嬢ちゃんの住んでる人が住む世界と人とは別の者が住む世界の境目。要は、ふたつの世界をつなぐ入口みたいなものかな?」


「だからこんな所にいたら危ないよ?」


人像がふっと縮まったかと思うと目の前に整った顔が現れた

「わっ...」


急なことで驚き声を上げてしまう


「お嬢ちゃん、1人なの?」


綺麗な模様の着物を纏った人ではないものが私の目の前をいっぱいにした。


明らかに人ではない。彼の後ろではフサフサと複数の尾が揺れており、頭の辺りからは三角の耳が生えていた


「質問に答えて欲しいな。」


彼の後ろではイライラと尾が揺れていた。


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