俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
「俺はお前の夫なんだ、家でくらいきちんと甘えろ」

困ったように眉尻を下げ、采斗さんは私を胸の中にそっと閉じ込めた。


ポンポン、とまるであやすように背中を叩かれる。

当たり前のように与えられる温もりと優しさに鼻の奥がツンとした。


どうして私を甘やかすの?


私はいい大人で、社会人だ。

簡単に弱音を吐くなんて情けないだけなのに。

こんな風に優しくされたら、これから先ひとりで立ち上がれなくなる。


「……私なら大丈夫」

「お前の大丈夫は大丈夫じゃないからな」

躊躇いもせず言い切る。


「お前を甘やかすのは夫の特権だろ」

「なにを言って……」

「詠菜が甘えられるのが、弱音を吐けるのが俺の前だけなら嬉しい」

耳元で囁かれる甘い声に心が震える。

胸の奥で意地っ張りな私と弱い私の感情が交錯する。


――ああ、もう限界だ。


際限なく膨らんだ恋心はもう制御がきかない。

迷惑になるとわかっている。

この想いは口にすべきじゃないと何度も戒めてきた。

私の気持ちなんて、求められていないって理解している。


だけど、これ以上隠し通すのは無理だ。
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