俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
【仕事が立て込んでいるので先に行きます】


付箋に用件を書いて、ダイニングテーブルに置く。

結局昨日はなんのメモ書きも残せなかったな、と頭の片隅で思う。


今日は請求書の締め切り日だし、忙しいのは嘘じゃない。

昨夜、泣いてしまったせいか軽い頭痛がする。

瞼が腫れていないといいのだけど、と独り言ちる。

疲れの抜けきらない、重たい心と体を引きずって玄関ドアを開けた。


内線電話が鳴るたびになぜかビクビクしつつ、一日の業務をこなす。

ふと出会った頃を思い出して自嘲気味な笑みが漏れた。


社員だと見つかりたくなくて、内線電話が鳴るたびにビクビクしてたっけ。


今では感じる気持ちがまったく違う。

まさか恋をするなんて思いもしなかった。

イケメンで有能だけど冷淡な御曹司、そんな印象しかなかったのに。


本当のあの人は全然違った。

仕事を、社員と会社をとても大切に思い、守っている。

そのための努力を日々惜しまない。


女性に冷たいわけでも、女遊びが激しいわけでもない。

誰よりも優しくて思いやり深い人。


その姿を知った時にはもう、引き返せないくらい好きになっていた。
< 164 / 221 >

この作品をシェア

pagetop