いつまで経っても既読にならない、詠菜にあてたメッセージを何度も眺める。
念のため総務課に確認したが、秘書課に届け物をした後直帰するよう伝えたと言われた。
今は午後八時を過ぎている。
誰かと約束があった?
どこかに出かけている?
詠菜にだって予定があるだろうし、それを咎めるつもりはない。
ただこれまでこんな風に連絡が取れなくなるなんてなかった。
なにより彼女はいつも俺に自身の予定を事前に伝えてくれていた。
そもそも詠菜にはきちんと話がしたいと伝えていたのに。
スマートフォンを何回も取り出しては画面を確認する俺を藤堂は呆れたように見ていた。
「日野原、過保護すぎないか? 大人の女性なんだから迷子になったりしないだろ」
「わかってる。でももし、なにかあったらどうする?」
「女性に対して素っ気なかったお前がこうも変わるとは、恋の威力は計り知れないな」
「お前にだけは言われたくない」
俺の返答に藤堂はこれ見よがしに肩を竦める。
そもそもこいつは今日、ここになにをしにきたのかわかっているのだろうか?