俺様御曹司は期間限定妻を甘やかす~お前は誰にも譲らない~
なんで私はこんなに動揺しているの? 

副社長の恋の噂なんて今に始まったものではない、気にする必要なんてないのに。


口の中に苦いものが広がっていく。


「今回のプロジェクトに副社長が関わるのは、周囲に如月さんとの結婚を反対されないように成功させて成果を知らしめる、とも言われているんですよ」


結婚?


心が敏感に反応する。


彼が本当に結婚したい人は――如月さんなの?

だったらどうして私と結婚しようとするの?

采斗さんの私への言葉はすべて……嘘だったの?


頭の中を幾つもの疑問が駆け巡る。

でも肝心な答えはひとつも見つからない。


「詠菜さん、どうかしました? 顔色が……」

その時、後輩が課長に呼ばれた。

「真理子ちゃん、呼ばれてるわ」

これ幸いと無理やり口角を上げる。


心がなにか強い力で握られているかのように痛い。

嬉しいはずのプロジェクトへの参加が急に重苦しいものに変化していくのを感じずにはいられなかった。
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