お見合いというのも、昨今は随分と簡略化したものだなと思う。私たちの仲をとりもつと言い出したかつての上司と現上司のふたりは、セッティングだけして見合いの席には来ないというのだから。


 上司に指定された場所は、都内の三ツ星ホテルのカフェラウンジだった。それだけで、気後れしてしまう。ドアマンの前を、肩を竦めて小さくなりながらエントランスをくぐった。上品なボルドーの床を踏む。ロビーを横切りラウンジへと向かう、その途中で一度パウダールームに立ち寄った。


「……亀爺、本当に余計なことを」


 ひょろっとして背中を丸めた、亀田課長の顔を思い出しため息を吐く。私の古巣である経理課の課長で、入社以来お世話になった人だから、彼の申し出を無下にはできない。この春、営業に異動になった私のことをずっと心配してくれていたのだと思う。


(……だからって)


 鏡の中に映る自分の顔を眺めた。今日は、朝からドライヤーを二回もやる破目になった。というのも、多少は華やかにした方がいいだろうかと毛先を巻いてみたのだが、出来上がった自分を見た途端に恥ずかしくなった。