イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活
真実の欠片
***

たくさんの本を読んできた。その中に恋愛小説もいくつもあった。拗れるのが恋愛ものの醍醐味で、そういうものほどのめり込んで読んだからか、よく頭に残っている。

読んでいるその時は、主人公に感情移入して同情したり感動したり、逆に主人公の行動に説教したい気持ちにもなったりした。

今にして思う。
たとえ間違っても、主人公たちはすごい。行動しようとするだけ偉いと思う。
だって、私にはこんな時、どうしたらいいのかちっともわからない。

ぱたん、と読んでいた本を閉じて膝に置くと、ソファの背もたれに背中を預ける。天井のダウンライトを目で追いながら、ため息をついた。

違う。
わからないわけじゃない。
あの女性は誰なのか聞いた方がいいに決まっている。

あの人のことだけでなく、『家族はいないって言ってたけど、どういうことなのか聞いていい?』とか、話を切り出すべきだ。

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