イジワル御曹司と契約妻のかりそめ新婚生活

番外編：あなたがいればいいのかも

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郁人さんが戻ってから、しばらく穏やかな日が続いた。
彼が仕事に向かってしまったら、会社のことは私にはよくわからない。忙しいのは以前と変わらない様子だが、時々は家で夕食が食べられるようになった。
多分、一緒に食べられる日を増やそうとしてくれているのだと思う。

元々、独り身ゆえ適当な料理の仕方しかしてこなかった。結婚してからは、平日は各自適当にとっていたし、郁人に食べさせるために意識して作っていたのは休日とお弁当くらいだ。

レパートリーが少ない。
ちゃんと習ったこともない。
そんなわけで、最近の愛読書に料理本が加わった。

今日は、帰ったら何を作ろうかな？
窓の外を見ながら、料理本にあったメニューを思い出していると隣の運転席から溜息混じりの声がした。

「今日は、嫌な思いをさせて悪かった」
「え？」

見ると、くっきりと眉間に皺が寄っている。
今朝は、朝からずっと皺が寄ったままだから、もしかしたら表情が緩んだとしも痕が残っているかもしれない。

今日初めて、郁人の叔父さんと叔母さんに会いに行った。
まあ予想通り、私は歓迎されないどころかねちねちと嫌味を言われた。

「あのふたりは以前からずっとあんな感じなんだ。歩実は何も悪くないから気にするな」