俺だけ見てろよ~御曹司といきなり新婚生活!?~

そんな言葉をぐっと呑み込み、呆気ない失恋にひとりで涙した。

クスクス笑って話していたふたりは、そのあと交際に発展したらしい。

しかも、『地味女が恋なんて気持ち悪い』という噂が学内で駆け巡り、私は次第に孤立していった。
 
私はそれに激しく傷ついて、絶対に見返すんだと決めたのだ――。



そんな着飾った偽りの私でも、文具メーカー大手の『啓陽堂(けいようどう)』に就職して三年。
そこそこうまく立ち回れている。

〝誰かが幸せになれる文具〟を作りたいなんて大きな目標を胸に、就活では中小の文具メーカーをいくつか受けたものの全部失敗。

なぜか父が盛んに勧めるので、絶対に無理だと思っていた大手の啓陽堂の入社試験を受けたら、奇跡の内定を手にした。


それから私の生活が一変した。

キャリアウーマン風の服装に、控えめではあるけれどかわいい系ではなくクール系の化粧。

そして、『私はいい女』と過剰なまでに暗示をかけ、常に笑顔は忘れない。

毎日、〝大人の女〟を装うのに必死になった。
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