恋を忘れたバレンタイン
「これから仕事に行きます。スポーツドリンクを頭の上に置いて置きますから。ゼリーが冷蔵庫に入っていますので自由に食べて下さい。今日は、午後外回りなので直帰しますから、早めに戻ります。それまで、休んでいて下さい」

 彼は、そう言うと、私の額に優しく触れた。


「もう少し休んだら帰るから……」

 私は、彼を見て言った。

 直ぐに帰った方がいいのは分かるが、一度横になってしまうと体が思うように動かない……


 彼は、ジロッと睨んで立ち上がった。
 寝室を出ていくドアの音を聞きながら、ウトウトしはじめる。


 でも、彼の居ないベッドの中に、なんだか物足りない淋しさを感じる。
 たった一晩だけの事だったのに、一体私はどうしてしまったのだろうか? 

 そろそろ、帰った方が良い…… 
 胸の中で危険だと警告音が鳴っている。

 そう、帰った方がいい……

 そう思いながらも、私は、眠りに落ちてしまった。


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