恋を忘れたバレンタイン
ホワイトデーの力
彼の姿を見ななくなって、すでに三週間が経っていた。

何事も無かったように、淡々と私の日々は過ぎている。
仕事も忙しく、慌ただしく流れている。

背もたれに体を預け、足を組んで資料を手に取る。


だけど、資料の隙間からちらりと彼の席を目に入れてしまう。

この三週間、どう頑張っても彼の居ない席を目で追っていた。


 薄れるはずの感情は、強くなっていくばかりだ。

 見なければ、会わなければ感情は薄くなる。そんな、恋しか知らなかった。
 いや、それが恋だったのかさえ今では分からない。



 そして、その日はやってきた。
 ホワイトデーだ。
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