恋を忘れたバレンタイン
 病院から帰る途中も、無理なくせにタクシー呼んでだとか、帰るなどと言う彼女を布団に寝かせる。
 おかゆを食べさせ、薬を飲ませる。


 帰ると言いながら、ベッドに横になっていく彼女が愛しかった…… 
 いつか、俺をこころの底から安心して頼ってくれないだろうか?


 出来ればこのまま一緒に居たいが、どうにも仕事は休めそうにない。
 なるべく早く帰れる段取りを考え、彼女の寝顔を見て思った。
 お願いだ、帰らないでくれ。
 まだ、俺は彼女に何も言ってない……



 その日は、彼女が気になり仕事どころでは無かったが、とにかく早く帰りたい思いで必至に業務を終わらせた。

 ちょっと、早い直帰の連絡に、部長は何も言わなかった。


 休憩中に、いつものように寄ってくる女子社員達に、風邪の時の対処方を聞けば、
何でも教えてくれた。


 急いでマンションに戻った所で、彼女がまだ居るかなんて分からない。

 だけど俺は、彼女の着替えまでも必死な思いで買っていた。

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