海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!
エレンの彫りの深い顔立ちや抜けるような色素の薄さは、ここルドランス王国よりはバーミンガー王国でよくみられる。
そうしてエレンの空を映したような瞳は、バーミンガー王家の特徴だ。
とはいえ現時点で言えるのは、たったこれだけ。だからこれはなんら確証のあるものではなく、俺の勘にすぎない。
真相は、陛下にしかわからない。……いや、もしかしたら陛下にもわからないのかもしれない。
なにせ探しておられる陛下自身、女性について詳細な情報を持ち得てはいないのだ。
あやふやな情報だけが頼りの、広大な砂の中から金を探しあてるような人探し。俺とてこんな状況で、たまたま見えたエレンがその縁者だなどと、楽観できるほど目出度い頭のつくりはしていない。
けれどこの勘に関しては、どうしてか荒唐無稽と笑い飛ばすことができなかった。
……それにエレンには、不思議な魅力がある。事実、俺は初対面のエレンに対し、無視することのできないなにかを感じていた。
どちらにせよ、俺はエレンを船に乗せる決断をした。ならばエレンに対し、最後まで責任を持たなければならない。
俺はエレンを探しに港に向かって走った。