海軍提督閣下は男装令嬢にメロメロです!

 一見では乱暴にも感じる扱い。だけど大きな手は、私を着地させる段できちんと衝撃を殺して、丁寧に下ろしてくれた。
 アーサーさんの手が離れても、脇腹のあたりがじんわりと熱を持っていた。
……ううん、熱いのは脇腹だけじゃない。全身の体温が、高くなっている気がした。
「どうした? 置いていくぞ!?」
「ハ、ハイッ!」
 前を行くアーサーさんのひと声にハッとして、慌てて後に続く。
 第二甲板から乗船した私たちは、上甲板を目指して階段を駆け上がる。どんどん先に行くアーサーさんの背中を必死で追いかけた。
 アーサーさんから少し遅れ、私は息せき切って上甲板に到着した。そして、そこで目にした光景に息をのんだ。
 乗組員が一糸乱れず整列し、アーサーさんに向かって敬礼していた。
アーサーさんは、凛と引きしまった表情で乗組員の前に立つ。
その雄々しい立ち姿からは、言葉では表しきれない威厳があふれていた。
……やっぱり、アーサーさんは軍神?
私は凛々しいアーサーさんから、目を逸らすことができなかった。美貌の軍神が、圧倒的な存在感で今この瞬間を支配していた。
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