状況が私を置き去りに、刻一刻と変わる。
 軟膏を塗りこめられた後、私はアーサーさんと晩飯を食べに、連れ立って食堂に向かった。
「エレン、すでに知っていると思うが、航海中の食事は朝晩の二回だ。食堂はセルフスタイルになっている。ここで飯を受け取り、食べ終えたら自分で下膳する。朝飯は割合に簡素だから、皆甲板やそこらで思い思いにかじっているな」
 あれよあれよという間に、私は一般乗組員からアーサーさん付きのコショーへと立場を変えた。それにより、周囲の態度があきらかに変わった。
「お、お待たせいたしました!」
「ふむ、ご苦労」
 緊張しきりの配膳担当が、二膳分の晩飯をのせたトレーを差し出す。アーサーさんは颯爽と、トレーを受け取った。そうして何事もなかったかのように、私を促す。
「さぁエレン、冷めないうちに食おう」
 ……どうしてだよ!? アーサーさんはどうして、この状況に違和感を感じないんだよ!?
 私はモーセの海割りの奇跡をこの目で見てるんじゃないかと、目玉を落っことしそうになった。

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男装  溺愛  年齢差  航海