イケメンエリート、はじめての純愛⁇
天然と純粋の違いが分かりません


咲子はしばらくその場に立ち尽くしていた。
堀江さんという人、何もかもが完璧すぎて、私の感覚がついていけない。
何だかじっとりと汗ばんだ額をハンカチで拭き、咲子は冷静になるためにもう一度ソファに座った。

そして、自分に淹れたお茶を一気に飲み干す。
そして、また無意識に立ち上がった。
さっき映司が立てかけた立ち鏡の前に立って、自分の姿をぼんやりと見つめる。

彼は、ほんの数分で、ちぐはぐな私の着付けをこんな風に素敵に仕上げてくれた。
髪は大きな団子を作り髪飾りをいい位置に飾ってくれて、驚いたことに、着物の帯は小さいけれど綺麗な太鼓帯でまとめている。

咲子は胸のときめきを抑えられない。
今まで生きてきた人生の中でこんな人は初めて…
咲子は胸に手を当てて、何度も深呼吸をした。

「好きになってもいいけれど、愛してはだめよ。
あなたの結婚相手はもう決まっているのだから」

幼い時からそんな事を母に言われて育ってきた。
そして、この歳になるまで、幸いな事に、お友達以上の感情を持つ男性は現れなかった。

恋愛初心者の私が、あんな最高級の男性を好きになってしまうなんてもってのほか。
今度こそ本気で笑われてしまう。

咲子は鏡に映る自分を見ながら、自分の頬をやさしくつねった。

目を覚ますのよ…
彼はただの仕事のパートナー。
それ以上の事なんて起こり得ないのだから…




< 34 / 222 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop