頭の中は真っ白。
足元もふわふわしていて、どうやって家に帰って来たのかよく覚えていない。
私が無事に帰り着いたのは、動物的な帰巣本能のようなものだろう。


誰もいない、電気も灯っていない、真っ暗な家。
よろよろしながら仄暗いリビングに辿り着いた途端、私は糸が切れたようにその場に座り込んだ。


冷たい床にペタンと座り、ぼんやりと辺りを見渡す。
通りに面した大きな窓から、レースカーテン越しに挿し込む弱い月明かりだけが、リビングを照らす光源だ。


少し先の床に仄かに落ちる光を見て、さっきの水城チーフが脳裏に蘇ってきた。
月光を背負い、その輪郭を銀色に浮かび上がらせていた彼の、どこか困った寂し気な表情が、私の胸をきゅうっと締めつける。


『俺は、一人の女として、君を見てる。溺れてる。……瑞希、俺は君が好きだ』


思考回路はずっと混乱していたのに、水城チーフに言われた言葉は、全部胸に直接刻み込まれている。
思い返さなくても、まるでニュースのテロップのように浮かび上がる。
そのどれにも心を大きく揺さぶられて、私は自分の身体を抱きしめ、上体を前に屈めて小さく縮まった。


「嘘……チーフが」


無意識に零れた呟きは、激しい困惑に揺れていた。