翌日の金曜日、私は少しでも早く上がれるように、朝から気合を入れて仕事をこなした。
パソコンで売り上げデータの集計をして、営業職の先輩から頼まれた提案書を製本する。
電話は肩と耳で支えながら応対して、まるでいつもの二倍、仕事している気分だった。


よそ見をする暇もなかったけれど、息を抜いたタイミングで、ついつい窓際に視線を走らせてしまう。
今週は、いつ見ても、そこに水城チーフはいない。
私が頑張って早く帰っても、チーフは上がれるんだろうか……。
不在が続く彼に、私はそんな不安を抱いた。


結局その日も、チーフをまともにオフィスで見かけないまま、終業時刻を迎えた。
一時間残業したものの、仕事を全部終えることはできなかった。
だけど、私はいそいそと帰り支度を始める。


まだ、たくさんの先輩が残っている中、「お先に失礼します」とオフィスを後にした。
エレベーターに駆け込んでから、腕時計で時間を確認する。
なんとか、七時半には帰れそうだ。


下降し始めたエレベーターの中で、私は壁に背を預け、ふうっと息を吐きながら天井を見上げた。
ちょっと胸がドキドキしているのは、急いで走ったせいじゃない。
今日、家に帰れば、久しぶりに水城チーフとゆっくり顔を合わせることができると、期待しているからだ。