司さんが家を出てから、二週間とちょっとが過ぎた。
本日、平日の仕事帰り。
私は、彼の部屋のキッチンに立っている。


クリスマス商戦の繁忙も、ようやく終盤に差しかかった。
毎日忙しい中でも、水曜日はノー残業で早帰りに努める。
今日は三十分オーバーしてしまったものの、なんとか仕事を終えた。
私は急いでオフィスを出て、その足でまっすぐ司さんの部屋にやってきた。


気付くと、「ふんふん」と鼻歌を歌ってしまうほどの上機嫌で、夕食作りの真っ最中。
料理上手な母を持つ私も、料理の腕にはちょっと自信がある。


司さんは、一人暮らしを始めてから、忙しいのもあり、夕食はコンビニか外食三昧だそうだ。
それを聞いてしまったら、居ても立ってもいられない。


今夜は、司さんに初めての手料理を振る舞えるチャンス。
私は、一口食べた瞬間の彼の反応を思い描きながら、煮物の味付けを確認した。


司さんはあまり甘党ではなく、実は煮物も苦手だと聞いたからこそ、あえてのチョイス。
みりんと砂糖を控えめにしたぶり大根は、私にはちょっとあっさりめだけど……。


「うん。上出来」


これならきっと、司さんの味覚にも合うはず。
私は絶対の自信をもって、無意識に口元を綻ばせた。