それから、一時間後。
私たちは、オフィスからもほど近いワインバーのカウンター席で、グラスを重ねていた。
L字型の角、私を真ん中に、隣に辰巳さん、斜めに境さんという並び。
無意識に、はあ、と溜め息を零した後、私はカウンターに沈んだ。
カウンターに顎をのせ、ロゼのスパークリングワインが注がれた三杯目のグラスを、ジッと見据える。
「もう、どうしろって言うんれすか……」
呂律が回っていないのは、自分でもわかった。
私はカウンターに完全に顔を伏せ、ぺったり額をつけて弱々しく愚痴る。
「紹介できないんじゃないのに。ただ、お母さんにどう言えばいいの、って。なのに……」
乾杯した後すぐ、辰巳さんと境さん二人がかりの質問攻めに遭った。
曖昧な返事でのらりくらりと誤魔化しながらお酒を進めていたせいで、私は二人より速いピッチで飲んでいた。
おかげで、早くもグダグダになってしまった。
「らのに、なんれあんなこと言うの。運命って、なんなの。しかも、諦めないとか……」
「……辰巳さん。瑞希ちゃんって、酒弱い?」
「いや。ワイン三杯くらいなら、結構平気なはずなんだけど」
私の愚痴はスルーして、二人が頭上で言葉を交わし始めた。