その日、母は一日中寝室に閉じこもっていた。
昼と夜の食事は私が作り、一緒に食べようと、母を呼んだ。
でも、寝室のドアの外から何度声をかけても、反応もしてくれない。


義父も困った様子で溜め息をついた。
『今日はそっとしておきなさい』と言われ、私は義父と二人、会話もないまま食事をした。


けれど、一夜明けて今日の朝食も、義父と二人きり。
昨日一日くらいなら、気持ちを切り替えることもできたけど、今日もこの調子では、さすがに心配だ。


私は、母の分の朝食をトレーにのせて、寝室まで運んだ。


「お母さん」


ドアをノックして、外から呼びかける。


「朝ご飯持ってきたの。ちょっとでいいから、食べて」


半ば縋る思いで声をかけたものの、やはり母から返事はない。


「お母さん……」


私はトレーを手にしたまま立ち尽くし、俯いた。


どうしたらいいんだろう。わからない。
私も司さんも、母の大事なものを壊そうとしてるわけじゃない。
でも、母にはやっぱりわかってもらえないんだろうか。
いつかは、と願っても、無理なのかな……。


思考をゆらゆら揺らしながら、自分の足の爪先を見つめ、無意識に奥歯を噛みしめた。
その時。


「瑞希」


トントンと階段を上ってくる足音が近付いてきた。
ハッと顔を上げた私の視界に、司さんの姿が映り込む。


「えっ。司さ……」