母たちの前では意気込んでみせたものの、私は頭を悩ませながらオフィスに着いた。
もちろんチーフはとっくに出社している。
すでに仕事に追われていて、いつも通り、近付きたくない冷気とオーラを漂わせている。


母に約束した以上、ビクビクしてるわけにもいかないけど……。
どうやってホームパーティーのお伺いを立てればいいだろう。
そもそも、楽しいんだろうか?


始業時間を迎えても、私は何度もチラチラとチーフを探った。
普段私は、怒られるようなミスをしでかさない限り、彼に呼ばれることもないし、もちろん自ら近寄ったりもしない。
勇気を出して窓際に歩いていこうものなら、『何事だ?』とばかりに、同僚たちの興味津々の視線に晒されてしまう。


そんな中で、プライベートな予定のお伺いをできるわけがない。
『業務中にする話か』と、怒られそうだ。


頭がとろとろになりそうなくらい悩んで、やっぱり誰の目もない場所で二人になるしかない、と考えた。
こうなったら……呼び出すしかない。
私は意を決して、キーボードに指を走らせた。


『水城チーフ、お疲れ様です。家のことで、折り入ってお話したいことがあります。二人でお話する時間、とっていただけませんか』


暑くもないのに変な汗が背筋を伝うのを感じながら、激しい緊張で心臓をバクバクさせて、チーフに社内メールを送った。