その夜、義父と母と三人で夕食をとっていた時、玄関のドアが開く音が聞こえた。
「ただいま」という声が耳に届き、私はドキッとして箸を動かす手を震わせてしまう。


「あら。司さん、今日は早いわね」


家で食事をとるようになってくれても、一緒に食卓を囲めるほど早い時間に、彼が帰ってくるのは珍しい。
母は自分の食事の手を止め、静かに腰を浮かせると、水城チーフを迎えに廊下に出て行った。


「お帰りなさい。ちょうど食事中なの。司さん、よければ一緒に」

「ああ、はい。ありがとうございます」


廊下から、二人のやり取りが聞こえる。
不揃いの足音が、近付いてくる。
私はじんわりと緊張して、無意識に箸を握りしめていた。


どうしよう。
昼間気合を入れたといっても、まだまだ心が追いつかない。
隣の席にチーフが来るのを意識して、私はカチンコチンになってしまった。


「ただいま」


ダイニングのドアが開いて、水城チーフが入ってくる。


「お帰り、司。今日は早いな」


父が目線を上げて、私の後方のチーフに、そう声をかける。


「ああ。海外との電話会議が流れたんでね」


水城チーフは素っ気ない口調で返事をして、一度リビングに向かっていった。