嫉妬深いから

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「何で男嫌いなの?」

隣で飲む男が、徐に聞いてきた。

ここに来る途中、あまりに月が綺麗で。
つい、夏目漱石の『月が綺麗ですね』の話をした。
そのせいか、いつもはしない、男女の話。

私は片眉をあげて、彼を見る。
答えようか、スルーしようか、少し迷う。
───まあいいか。

「別に『男嫌い』って訳じゃない。
恋愛したいと思わないだけ。」

そしてまた、視線を前にある酒瓶の群れに戻す。

私の手元のグラスが空になっているのを見て、彼がバーテンを呼ぶ。
モスコミュールの次はソルティードッグ。
私のパターンを知っている彼は、勝手にソルティードッグを注文した。





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