心がどことなく弾む季節。
そんな形容が似合う四月の空の下、宮岡優花(みやおか ゆうか)は街の一角で空気にそぐわないほどの大きなため息を零した。

トボトボと歩く優花をサラリーマン風の男性が追い抜いていく。スーツを着慣れていない様子が背中から漂っているところをみると、おそらく就職したてのフレッシュマンだろう。


「いいな……」


そう呟かずにいられなかった。

大学を卒業して丸六年勤めた会計事務所が大手の事務所に買収され、主に事務処理をしていた優花は人員整理のため解雇。二月末で無職になってしまったのだ。

まじめに勤めてきた自分がそんな憂き目に遭うとは思いもせず、途方に暮れること一ヶ月。いつまでもそうしているわけにはいかないと、ようやく重い腰を上げた。

ところが世間はそう甘くない。次の会社がなかなか決まらず、たった今、職安に相談してきたところだった。

できれば同じく会計事務所に転職したいけれど、わがままも言っていられない。
なにしろ優花の元には、実家の両親から『こっちに帰ってきてお見合いでもしたらどう?』と再三にわたって電話がかかっているから。