クラスメイトの告白。
「ねぇ、とりあえずこのヅラ……じゃなくて、カツラどこかにしまってもらえると助かるんだけど……床に置いてあるの、めちゃくちゃ怖くて」
「ハハッ、了解」
伊原くんは、部屋の網戸を開けてカツラをベランダに干した。
「それ、鳥の巣に間違われない?」
「汐野っておもしろいやつだな」
「え? どのへんが?」
くしゃっとした笑顔……。
伊原くんて、こんなふうに笑うんだ。
「それと早く服着てください」
「さっきからそればっかだな。着るよ、いま」
「お願いします」
私はくるりと背を向けた。
6月の終わりとはいえ、今日はなんだか異様に暑い気がする。
顔がとくに熱い。
この部屋が暑いのかな。
私は自分の顔を手であおぐ。
それにしても本当に何もない部屋。
テレビもないし、テーブルもイスもない。
床の上にパソコンと、部屋の隅に布団がたたんで置いてあるだけだ。
さっき、ひとり暮らしだって言ってた。
伊原くんにどんな事情があるのかわからないけど、ひとり暮らしで寂しくないのかな。
寂しがり屋の私には無理だ。
クローゼットを開ける音が聞こえて、私はチラッと彼のほうを見る。
まだ信じられない……。
いま目の前にいる男の子と、クラスメイトの伊原くんが同一人物だなんて……。
黒いTシャツを着た彼は、私の前に座った。
「さっ、本題に入ろうか」
そうだ、本題。
私がここに来たのは、彼の話を聞くためだ。
突然、相棒になってほしいと言われた理由も……。
さっきまで笑顔だった彼は、一瞬で真剣な表情に変わる。
「半年前……12月24日に校内で起きた事件のことだ」
事件……。
いまから半年前、高校2年生の冬。
クリスマスイブの日に、うちの高校でとても悲しい出来事が起きた――。