クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす
第三章 大きなクスの木の下で
雲から見え隠れする朧月がランドルシアの王都をぼんやりと照らすとある夜――。

王都にあるマーランダ施療院の地下に長蛇の列ができていた。規則正しく置かれた燭台が冷たい廊下を照らしている。

暗がりの中に並んでいるのは薄汚れた日雇い労働者の男や、痩せた小さな子どもを抱えた母親などで、その身なりからひと目で下級層の街人だとわかる。そして列の先には、まるで牢屋のような窓のない小部屋で老いぼれた老人と会話をするひとりの男がいた。

「シュピーネさん、あんたの言う通りに怪我したところをちゃんと清潔にして、くっせぇ薬も毎日塗ってたら、ほら!」

老人は嬉しそうに穴の開いた靴を脱ぎ、つま先をぴくぴく動かしてシュピーネと呼んだ男に見せた。間伐中に木に挟まれたらしく骨折はしなかったものの、しばらく放置していたのか初診のときにはかなり化膿が進んでいた。しかし、見たところ傷口にかさぶたもできて完治に向かっているようだ。
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